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Little Eden



10月14日水曜日晴れ

あの日以来、錬司はあまり私の部屋に来ようとはしない。
意識して来ないようにしてるんだろうし、そのほうが私たちのためにもいいのだろうけど、ちょっと淋しい。
エハラさんが言ってたように「仕事と結婚を両立できない男は出世しない」っていうのに、錬司を侮辱された怒りを感じたと同時に、心の隅に頷いてる私を見つけた。
そして、その話を錬司にしたら「言いたい人には言わせておけ。僕らの事情を知ってるわけではないし、職場がどんなにハードなところか、知らないだろうし…」
錬司を完璧な人間と考えてる私。
ほんとはそれはいけないことなのだ。
彼をそういう人間と思えば思うほど、そうでないことを確認した時、ショックを受けてしまうから。
ほんのしばらくでいいから、錬司のことを忘れたい。
錬司がいなくても楽しい時を過ごしたい。

まあ、錬司は出世など考えない男だし、私も出世なんて彼にはしてほしくないと思っている。出世なんかしたら、仕事仕事で私と過ごす時間がなくなってしまうからなあ。その気持ちはあの頃も今も変わらない。彼はその気になればけっこういいところまで行けると思う。もちろん、高学歴ではないからそれなりに、だろうけど。それでも、やる気さえあれば、会社の社長にだってなれる男だと思うよ。けど、彼はそんなのめんどくさいと思ってる。私はそれでいいと思ってるし。

それにしても、頻繁に私の部屋に来ていたし、泊まったことも何度かあったわけで。それに対して父はいい感情を持っていなかったわけだ。で、それならそれで早く結婚しろと。錬司の家は自分の部屋がなかった状態だったんで、どうしても私の部屋にくることになるし、外で会う事にもなってしまう。彼が自分の部屋でも持っていたら、少しは事情も変わってたかもしれないよねえ。まあ、しょうがないことだったんだけどさ。






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