まあ、錬司は出世など考えない男だし、私も出世なんて彼にはしてほしくないと思っている。出世なんかしたら、仕事仕事で私と過ごす時間がなくなってしまうからなあ。その気持ちはあの頃も今も変わらない。彼はその気になればけっこういいところまで行けると思う。もちろん、高学歴ではないからそれなりに、だろうけど。それでも、やる気さえあれば、会社の社長にだってなれる男だと思うよ。けど、彼はそんなのめんどくさいと思ってる。私はそれでいいと思ってるし。 それにしても、頻繁に私の部屋に来ていたし、泊まったことも何度かあったわけで。それに対して父はいい感情を持っていなかったわけだ。で、それならそれで早く結婚しろと。錬司の家は自分の部屋がなかった状態だったんで、どうしても私の部屋にくることになるし、外で会う事にもなってしまう。彼が自分の部屋でも持っていたら、少しは事情も変わってたかもしれないよねえ。まあ、しょうがないことだったんだけどさ。 | ||