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Little Eden



10月30日金曜日晴れ

今日のような天気がずっと続いてくれればいい。こんなに気持ちの良い天気ならシンゾウ君も勉強がはかどるに違いないから。
マナミが私にあてる手紙にはいつも”シンゾウのことを考えて””シンゾウのために”といったようなシンゾウ君のことしか書かず、まるで私には耐えること以外には何もするな、といったような内容で、当初の私は”私の心はどうでもいいっていうの”と、つらく思っていたのだけれど、今の私はあの頃の私とは違う。
本当に単純な人間だと思うけど、ある本にまったくマナミと同じことが書いてあった。
女とはそうあるべきだ、と。だからといって、決して女に心の自由がないと言うわけではない。
だから、マナミが助言してくれたように、自分は国立を受けるわけじゃないからといって、彼がどういった立場にいるかを、何も知らないより、自分も彼と同じ立場になったつもりで、いろいろ調べたりして勉強法を教えてあげたり、元気づけてあげたりすればいいのだ。とにかく、彼の性格や気持ちを理解すること。
今までの私はばかだった。彼は私のことをどう思ってるのかってそればかり考えて、彼の本当の気持ちをわかろうともしなかった。私は彼にとって良い人間、そして、彼の心の支えになるよう頑張ろう!

5校時目は10分ほど時間をとってバトミントン部室に入った泥棒のことについての話があった。
そのあと、選現だから、廊下に出たら地理のシンゾウ君が来たので、手を振ったら通りすぎる時、小さな声で「おう」と言った。右手をちょっとあげかけた。もう少し前の私なら、トッペさんだったら…なんて比べてたけど、今の私は大満足。男はほかの男と比べられるのはイヤなんだって。
シンゾウ君はシンゾウ君だものね。彼にとっては最大の挨拶表現だったかもしれないよ。

クロダ先生の推薦で、同和の朗読をすることになった。不安だけど良いチャンスだからチャレンジしてみようと思う。一歩でもシンゾウ君にふさわしい女になりたいから。

私のような女はシンゾウ君タイプとはたぶんうまくいかないんじゃないかなあと今は思う。結局、私のようなワガママな女っていうのは、私のことを一番に考えてくれる人じゃないとダメなんだって。つまり、自分の夢より好きな人の夢を大切にしたいという人。で、旦那である錬司はそういう男だった。だから今の私は私らしく生きれる人に巡り会えて幸せなんだ。






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