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Little Eden



10月12日月曜日晴れ

よく人は”現実をみつめなさい”と言う。私にとっての現実は何だろう。
今日、私は進路室で島根大学の案内書を見た。そこに書かれてあることを見て、私は淋しさを感じた。それもとっておきの淋しさだ。シンゾウ君は大学に行ったら、きっと私のことなんか忘れてしまう、と。
彼は、恋愛は大学に入ってから、と言っていた。だけど、やはりそれは同じ大学での人とだと私は思う。
必ず私以上に、彼の関心を惹く人が現れるはずに違いない。
そして、これが”現実”なのだ。ずっと、大学が違っても仲良くしていけて、いつかはゴールインなんて、それは”夢”でしかない。
だけど、今日も帰りにあの人に会ったけど、あの時、彼の顔を見てすごくホッと安心したのも”現実”なんだ。
私と出会った時のあの人の態度も”現実”なのだ。
今はそれが私にとっての”現実”なんだろうけど、いつの日か、そういった幸福の”現実”がなくなる時がくる。あの人が、私に全然関心を持ってくれなくなる”現実”がくるのだ。
きっと、その時には、まだ私、彼のことを大好きであるはず。そして、今以上に苦しまなくてはならない。
今さらながら、数学をもっともっと勉強しとけば良かった、なんて、後悔してみても始まらない。
まさか数学ができないことで、こんなに後悔する日が来るなんて、あの頃、想像だにしていなかった。

話はコロッと変わって、今日の音楽は自習だったんだけど、その時間、コニシ君たちのクラスも自習だったらしく、イチロウ君が音楽室に来た。彼は戸棚から本かなんかを出してたんだけど、その本の置いてある場所に、もう少し前まで、シンゾウ君のトランペットがあったのだと思うと、チラッと見た戸棚の中が、なんだか広ぉく見えた。もうあの場所に彼のトランペットが置かれることはないと思うと淋しい。
よく、あの戸を開けて、手紙を入れたっけ。まだ卒業したわけじゃないのに、すごく懐かしいような淋しいような変な気持ち。

共通一次の前は、確か5教科すべての試験じゃなかったはず。国文科に入りたかった場合、国語ができればいいという感じで、私は中学から数学ができなかったんだけど、国語さえできれば大学に入れると思っていて、高校に入った時はシンゾウ君の受けた大学に私も入るつもりだった。でも、勘違いから私は島大を諦めたんだった。しかも数学もできないとダメだと知ってしまったからということもあって。

とはいえ、何が何でも入りたいと思ったらできるはず。でも私は楽な道を選んでしまった。推薦の上、作文と面接だけで入れる短大を選んでしまった。思うに、シンゾウ君と同じ大学に進めばたぶん彼の恋人になり、いずれはゴールインというのも夢じゃなかったかもしれないと思う。それはわからないけれど。それでも、同じ大学に入るくらいの気概があれば、私はどんどん彼に関わっていっただろうし、二十歳前後の私はけっこうモテていたということもあり、彼も気持ちが動かされなかったということもなかったんじゃないかなあって。すごい自信だよな。(笑)

「夢は叶えるためにある」と言った人がいた。現在の好きな人。ああ、もちろん愛しているのは旦那さまである錬司だけなんだけどね。「夢は叶えるためにある」と言ったその人のその言葉を、私は違うと思いつつ、子供の頃の私にはその言葉を強く言いたいとも思った。頑張ればきっと叶ったはずだよって。

高校を卒業して二十歳で就職するまで、私はずっとシンゾウ君を忘れずにいた。2年とちょっと、ずっと彼を思い続けたものだった。錬司とお付き合いするようになるまでに一人、気になる人も出てきたものだったけど、シンゾウ君はやはり私の心の中で特別な存在になっていく。それは今も同じ。好きで、尊敬できて、大切な人。それは中学の時に転校してしまったハヤトも同じ。まあ、ハヤトは尊敬というのはないんだけどね。そこまでになるほど過ごした期間がなかったからなあ。だから、ハヤトは私にとって初恋の相手で、シンゾウ君は尊敬する人で、そして旦那さまは愛する人。あ、もう一人いるなあ。「夢は叶えるためにある」って言った人。まあ、この人のことは手書きの日記には出てこないか。誰であるかは一部の人は御存じだと思うけど。(笑)






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