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Little Eden



10月5日火曜日くもり

きょーは別にこれといった事件はなかった。1校時と2校時の休けい時間。タクロウがきょーしつにきた。まどのとこでシンヤたちとはなしていた。
2校時になって先生がきたとき、はじめてタクロウは帰らなきゃならないことがわかって、顔をまっかにしながらきょーしつをでてった。バッカダナー。
あーあ。きょーもまんぞくにコウイチロウと話せなかったな。私、コウイチロウにおっかけてもらいたい。私がおっかけるのなんてつまんない。好きなの。コウイチロウが。

今でも、真っ赤になって慌てて自分の教室に戻る彼の顔を覚えている。30年も前の出来事なのに。タクロウは色白な少年だったよなあ。そんなに美男子という類ではなかったと思うけれど、とにかくひょろりと背が高いのが印象的で、それでかっこいいと私は思っていた。バスケをする姿にしても、色白だったものだから見ようによっては「なまっちろい」という感じがしないでもなかったし。声も高くて落ち着いた声というものでもなかった。でも、コウイチロウの声はどうも思い出せないけれど、タクロウの声はハッキリと思い出せる。それも不思議なことだよね。どっちかっていうとタクロウよりコウイチロウのほうが今でも「好きになってよかった」と思える人ではあったんだけど。タクロウにはむかつく思い出のほうが多かったけれど、コウイチロウには楽しい思い出しかなかったから。嫌悪感のほうが好感より記憶に刻まれるということなのかしらね。






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